• 内科医師からスタートし、現在は三代続いている漢方専門のクリニックを銀座で開業中。女性系疾患(月経関連、更年期、 不妊症など)、アトピー性皮膚炎などから、ちょこっと体の弱い人までお見えになります。趣味はマラソン(基本的にはインドアでテレビ派)、猫(アメショ)、週に1回の外食。マラソンはsix stars finisher(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク)日本人では338人目位の達成!!

2022年7月にブログを開始し、今では開設当初には想像も出来なかった程の多くの方が毎日訪れてくれるようになりました。そして今年は1月3日とボストンに滞在していた4月18日を除いて、毎週更新することが出来ました。今になって正月とボストンの時も更新しておけば皆勤賞だったのに!と少し後悔しています。

今年ブログで一番ヒット数が多かったのは胃腸系の記事と当帰芍薬散や桂枝茯苓丸に関する記事でした。そこで「当帰芍薬散」と「桂枝茯苓丸」についてまとめの記事を書いて年内最後にしたいと思います。今回は色分けして、分かりやすいように表にしました。(色の付け方にやっと気付きました!)生薬の名前ごとに色を付けました。

赤:女性系(血)
青:水分代謝系(水)
黄:気を巡らす系(気)

四物湯(女性)五苓散(水分)当帰芍薬散桂枝茯苓丸
当帰
芍薬
川芎
牡丹皮
桃仁
白)朮
茯苓
沢瀉
猪苓
桂枝
地黄

四物湯(しもつとう)は女性の基本処方です。これは血液の質や流れを良くする処方です。黒字の地黄と言う生薬は体に気(エネルギー)を入れて血を作ります。一方、水分代謝の代表的処方は五苓散(ごれいさん)です。黄色文字の桂枝は気を回して水分代謝作用を促進させます。

この四物湯と五苓散を足した処方が当帰芍薬散となります。つまり血と水の症状を改善する処方です。女性系生薬3種と水分代謝系生薬が3種の組み合わせなので、水毒症状のない方は当帰芍薬散の適応ではありません。そう言う方が選ぶのであれば四物湯の方が良いでしょう。確かに当帰芍薬散は四物湯を含むので、そこまで外れではありませんが、含まれる四物湯は半量程度だからです。

もちろん水毒症状のある方は四物湯より当帰芍薬散が適応です。過剰な水は体を冷やして血の流れを妨げるからです。

桂枝茯苓丸は女性系生薬3種類、水分代謝系1種類、気を巡らす系1種類の合計5種類の生薬より構成されています。女性系生薬の芍薬(しゃくやく)は当帰芍薬散と被るのですが、さらに牡丹皮(ぼたんぴ)、桃仁(とうにん)と言う赤い太字で書いた作用の強い生薬が使われています。これらの生薬は体質に合わないと体を冷やしてしまったり下痢になったりします。しかし血液の流れを良くする作用は強いので、より症状(子宮筋腫や内膜症などの女性系疾患)の強い人に適しています。

最初に当帰芍薬散は水毒症状が伴う場合と書きましたが、経験上多くの女性の方は大なり小なり水毒症状を伴っています。自分で最初に選ぶのであれば当帰芍薬散(もちろん四物湯でも良いです!)、それが効いている気がしないのであれば、桂枝茯苓丸の順番で良いでしょう。当帰芍薬散は比較的早くに尿量が増えれば効いているはずですし、月経痛なども遅くとも服用開始後次の次の周期までには軽減すると思います。

最後に桂枝について簡単に書いておきます。桂枝は特に体の上部(頭など)の気(エネルギー=熱)を下方に下げる作用があります。言い換えると、のぼせ、耳鳴り、めまい、頭痛、肩凝りなどの症状を改善する作用があります。桂枝茯苓丸の説明書きにそれらの症状が書かれているのはそのためです。女性系(瘀血)と更にこれらの症状が気になるけど、桂枝茯苓丸では下痢になってしまう人は当帰芍薬散ではなく、むしろ五苓散(言ってしまえば苓桂朮甘湯や連珠飲)+四物湯が良いでしょう。

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さて、こちらは大掃除など年末忙しいのに、うちの猫はやたらに走り回っては家の中を破壊して散らかし、その上にお腹を空かして騒々しくて困っています!

そんな年末になると当院の患者様で海外に在住している方や留学している方などが続々と帰国され、久しぶりにお会いする方が多く世間話が長くなってしまいます(笑)なぜかヨーロッパや香港在住の方などが多いのですが、ついついアレコレ長話になってしまいます。また皆さん年末には戻ってしまうので、処方も長期になって薬剤師は大変そうです。そして今日はフランスから帰国された方が出産報告に来て下さいました!何をやっても採卵できずに来院されたのですが、排卵湯(はいらんとう)をメインに服用して頂いて、無事に妊娠し出産まで至ったそうです。太陽のような嬉しそうな笑顔で報告を頂く時が、この仕事をやってて良かったなと心底思える時です。その一方、今日は流産の報告もあり喜んでばかりはいられないのですが、「年が明けたらまた頑張る!」とおっしゃっていたので、こちらも次なる処方を練っておきます!こうやって来年もたくさん良いご報告を頂けるように頑張ります!

また、今年は東京→ボストン→シカゴと3つもフルマラソンを走ったので、股関節や足首、膝が痛む日が多かったです。練習量が増えるとどこか痛めるの繰り返しでした。さらにはボストンマラソンでシックス・スターにまでなってしまったので、ちょっと大きな目標もなくなったのも痛みを感じる原因かも知れません。なんやかんやで初マラソンの長女にシカゴでチンチンにやられて15分近い大差をつけられたのも、目標なくボーッと過ごしていたからだと思っています。ただ2025年位にはシドニーが昇格してセブン・スターになるみたいなので、そうなると7つ目を是が非でも取りに行かなければなりません。そのためにも地道に努力だけは続けて行こうと思っています!

しかし「良い報告をたくさん貰う」ことや「7つめの星」など努力を必要とすることを目標にするよりも、本能のまま暴れ回って次の御飯を目標に生きるのも意外に賢い選択かも知れません(笑)

細野漢方診療所 細野孝郎

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