• 内科医師からスタートし、現在は三代続いている漢方専門のクリニックを銀座で開業中。女性系疾患(月経関連、更年期、 不妊症など)、アトピー性皮膚炎などから、ちょこっと体の弱い人までお見えになります。趣味はマラソン(基本的にはインドアでテレビ派)、猫(アメショ)、週に1回の外食。マラソンはsix stars finisher(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク)日本人では338人目位の達成!!

前々回(1)、前回(2)からの続きになります。家方清暑益気湯についてのまとめになります。

前回、家方清暑益気湯には構成生薬から考えて

  • 消化機能を整える
  • 水分代謝を調整する
  • 発汗作用を調整する
  • 篭った熱を冷ます
  • 血液の質を良くする

これらの作用があると書きました。この多くの作用があるために14種類の生薬が配合されているのです。これは「夏バテ」と言う多くの症状を呈する状態に対して、幅広く使うために最終的に14種類もの生薬が積み重なってしまったのだと思います。なので常備薬(予め家に置いて置いて自分の判断で服用する)として最適なのです。しかし夏バテ状態は人によって症状が様々です。水分を摂りすぎて胃腸機能が低下しただけの人や、また水分代謝が悪くて体が重いだけの人、更には熱が篭って体内が熱くて不快な人などなどです。家方清暑益気湯に当てはまる症状が揃っている場合はそれで良いのですが、上記の様に当てはまるのが一つ、二つの場合はむしろ他の処方を考えるべきです。

夏バテは肝腎バテ

基本的に夏バテは過剰な熱が体に入ることによって、主に肝や腎がダメージを受けた状態と考えています。なので夏バテを「肝炎みたいな状態(前肝状態、肝臓病になる前の状態)」と考えています。症状的に肝炎と似たり寄ったりだからです。肝炎では内臓に炎症があるために熱が篭るし、体は怠いし、更には肝臓の炎症が隣接する腎臓に波及して腎臓も機能低下し水分代謝が悪くなって浮腫む。夏バテの場合には、そこまで症状は激しくはないにしても多少これらの症状を自覚されるでしょう。うちの父親は肝炎の患者さんに小柴胡湯や柴苓湯だけではなく、清暑益気湯も処方していました。当時は「夏でもないのになんでそんなん処方すんねん??」でしたが、夏バテを肝腎バテと考えると合点がいきます。

肝系の優しい処方の補中益気湯に腎系(水分代謝系)の生薬を加えて、更には胃腸も良くして、更に熱を冷ます様な感じにしたのが清暑益気湯とも言えます。ここでは良く言う夏バテなので、既にバテているので弱った状態を想定しています。なので優しい補中益気湯がベースになるのです。

元気が溢れた夏バテ、そもそも夏バテと言うのか謎ですが、その場合には肝腎系の処方をメインとして考えれば良いと思います。これは昨年の7月の記事で「肝腎養生のための漢方」と題していくつか書いていますのでそちらをご参考下さい。

この様に夏バテと言えば、何も考えずに清暑益気湯の様に広範囲に効く処方を選択するだけではなく、症状や体質に合わせて、もっとピンポイントな処方を選択すればより効果的でしょう。

では皆様、夏バテをせずに良い夏休みをお過ごし下さい。当院は8月も通常通りの診療です。

さて、暑さと湿度にもめげずに先日は好物の坦々麺を食べて来ました。世に坦々麺は色々とありますが、ここのはお気に入りの一つです。赤いので辛く見えますが、あまり辛くなく、むしろ胡麻のもっちりと粘る感じが効いています。塩分も程々でとても安心する味です。激辛が好きに人には期待外れでしょうが、私は唐辛子の強い物はお腹を下すので丁度良い感じです。麺の種類も選べて、通常麺はもっと細いのですが、今回は三角麺にしてみました。

猛暑日が続いて、水分摂りすぎで胃腸の調子も段々と下向きになって来る頃です。清暑益気湯や胃苓散などを上手に服用して体調良くお過ごし下さい。また夏バテ対策のお茶、和中飲のサンプルありますので、ご来院の際などにおっしゃって下さい。
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細野漢方診療所 細野孝郎