良いとこ取りの温清飲
両者の欠点を打ち消すために黄連解毒湯と四物湯を半量ずつ合わせた温清飲ですが、本当に理屈通りに上手く作用するのでしょうか？それとも「本に書いてあるからこれは効くはずです！」みたいなレベルの話なのでしょうか？？本に書いてあるから効くのならば、この世に治らないものはありません。
温清飲は上手に使えば本に書いてある通りにはなるけれども、そうするには順序が必要です。つまり使う時期を間違えると四物湯の副反応が前面に出てしまうし、また時には黄連解毒湯の副反応が出ることもあります。実際の経験上から四物湯の副反応は分かりやすいのですが、黄連解毒湯のは少し分かりづらいです。
温清飲の時期は富士山に例えると五合目
アトピー性皮膚炎は最終的には皮膚血流を改善して、皮膚を元の状態に少しでも近づけないと良くなりません。なので皮膚血流を改善する過程では大なり小なり副反応が出ることは想像できます。それをどの程度気付かないうちに通過できるか（目立たない）がコツだと思っています。そのためには最初から温清飲を使うのではなく、黄連解毒湯から開始して、炎症が落ち着けばゆっくりと減量しつつ、その代わりに四物湯を少しづつ増やして行くのです。そのまま目立った副反応なく温清飲に移行できる方、途中で副反応が出たり、また自然経過（季節、食事などの外的要因も含む）による悪化のため黄連解毒湯に戻る方など様々で、簡単に温清飲を服用できるとは思わない方が良いでしょう。
温清飲が服用できる状態までくれば皮膚の状態も以前と比較すると、落ち着きつつある状態だと思います。人によってはこの状態で満足して治療を終了される方もおられます。また一方、もっと良い皮膚の状態を目指して、黄連解毒湯を抜いた処方を希望される方もおられます。温清飲を飲める状態は富士山で言うと五合目です。五合目で満足する人もいれば、中には頂上まで極めたい人もいる、人それぞれ満足地点が異なるのは当然です。
女性の方などは最終的には四物湯メインで桂枝茯苓丸などを加えたりすることで、皮膚の血流改善だけではなく、さらには子宮卵巣系の血流も良くなるのでホルモンバランスから変わって月経も整い、期待していた以上の状態まで回復するでしょう。
使わない方が良いと思ったのに温清飲が効いた例も
今更ながら温清飲を使う時期は本当に複雑で難しいです。炎症部分がかなり目立ち、乾燥も部分的にある方で、黄連解毒湯中心で頑張っていたのですが中々好転しませんでした。私の感覚では温清飲では絶対に副反応が出るだろうと思ったのですが、その方は乾燥の部分が気になって仕方ないので早く黄連解毒湯を減らして温清飲を試してみたいとおっしゃいました。正直、う〜〜〜〜んと思ったのですが、黄連解毒湯の投与も長期になって行き詰まっていたので、少しづつ四物湯を混ぜて、一ヶ月で温清飲に移行してみました。不思議なことに今までにないくらい物凄く良くなりました。この様な事例をつい最近だけでも3名経験しています。恐らくは炎症部分の大半が元々は乾燥皮膚状態で、それを過度に引っ掻いて見た目の炎症が悪化していたからだと思っています。とは言え、引っ掻いて炎症になっているのは事実なので、その部分は一時的にせよ温清飲でより赤く痒くなったと思います。この方達はその状態を良くなるための通過点としっかり理解されていたのかと思います。この様な良い例があったとは言え、こちらとしては炎症部分が大きいと、やはり未だに使いづらい、まだまだ使うのを躊躇ってします。
話変わって、最近はスポーツウォッチを付けっぱなしにして心拍数から歩数、または睡眠までも試しにモニターしています。以前は走る時にだけしていたのですが、色々と測定出来るので付けっぱなしです。これは祝日の睡眠データですが、この時は睡眠スコアー92点とかなり良い方でした。４時頃に覚醒していますが、猫に足指を齧られたからです。その前日が一晩中浅い眠りで49点と低スコアーだったので、妨害にもめげずなんとか回復できました。
当院の患者さんでも、「睡眠時間は足りていると思うのですが、寝た気がしない」とおっしゃる方は多数です。自分も長時間寝てもスッキリしない時は、深い睡眠がほぼない状態です。しっかりとグラフになってスコアーまで出てくるので、納得するしかありません。一つ分かったことはアルコール摂取をするとスコアーは悪化することです。このあたりも含めて、今後はどの様に睡眠の質を上げて行くか思案中です。
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細野漢方診療所 細野孝郎
