高プロラクチン血症の漢方治療

高プロラクチン血症とは

血中プロラクチン値が15ng/ml以上ある場合を高プロラクチン血症といいます。その結果、ドーパミンの代謝が促進され視床下部からゴナドトロピン放出ホルモンが減少します。ゴナドトロピン放出ホルモンは下垂体前葉に作用し、卵胞形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンを放出させるのですが、これらの不足により卵胞発育が障害されます。言い換えると卵子の成長を阻害したり、または黄体機能を弱めたりしますので、不妊症の原因となります。

原因としては、遺伝的体質、ストレス、過度な運動、妊娠、乳頭刺激などの生理的な要因から、下垂体腺腫、または間脳障害などがあげられます。また一部の薬剤(向精神薬や胃薬など)の副作用によっても高プロラクチン血症が引き起こされます。

一般的にはカバサールやテルロンなどが処方されると思います。

漢方治療

目的:「気・血・水」や「肝・心・脾・肺・腎」などのバランスを本来の体のあるべき状態に整え妊娠・出産に適した体作りを目的とします。

主に子宮や卵巣などの血流低下(瘀血おけつ)を改善します。

卵巣の血流を改善することで卵巣機能を改善させ、女性ホルモンなどのバランスを整えます。

子宮の血流や血液の質を改善することで子宮内環境を改善します。これらの通常婦人科系の治療が基本となります。

炒麦芽(炒った麦芽)

上記の考えで基本処方を決定し、さらに炒麦芽いりばくがを用います。麦芽には退乳の効果(乳汁分泌の消退・乳汁の再吸収)が古来より認められており、乳汁がうっ滞して乳房が腫れて痛むときに効果があると言われて来ました。つまり高プロラクチン血症の乳汁分泌作用に効果があるということは、血中の高すぎるプロラクチン濃度を改善する作用があると思われます。

つまり基本処方は一般的に婦人科系疾患で用いる処方をベースとして考え、さらには高プロラクチン血症に効果があると言われる炒麦芽を加えて処方を完成させます。

漢方治療の症例

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この記事を書いた医師

院長【細野漢方診療所責任者】

細野 孝郎(ほその たかお)

漢方では、体を整えることで、病気を治したり、また病気になりにくい体作りをします。体のことでお悩みの方はもちろん、現在は健康だと思われている方も、ビタミンを摂るように、自分に合った漢方をみつけて、健康で楽しい人生を送りましょう。

昭和63年北里大学医学部卒 
日本東洋医学会認定医国際抗老化再生医療学会名誉認定医国際先進医療統合学会理事千代田区医師会所属

川崎市立井田病院、藤枝市立志太病院、北里大学病院などを経て現在に至る。
北里大学病院では、膠原病・リウマチ・アレルギー外来を経て、漢方外来設立に尽力、担当。
1992年より聖光園細野診療所でも診療を開始。2021年12月法人(聖光園)から独立して細野漢方診療所として開設し診療を継続中。
得意分野:内科系疾患全般、月経困難症や不妊などの婦人科疾患、皮膚疾患。また、体質改善や健康維持など、加齢にともなうエイジングケアの漢方にも力を入れている。
趣味:猫、洗濯、料理、掃除、フルマラソン(サブフォー、ロンドン、シカゴ、ニューヨーク、ベルリン、フランクフルト、香港、東京、大阪、京都、神戸)など。