細野漢方診療所 Hosono Kampo Clinic
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私の漢方治療の考え方

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そもそも漢方薬って

漢方薬は基本的には複数生薬の組み合わせによる処方です。例えば有名な葛根湯かっこんとうは7種類の生薬の組み合わせです。複雑な処方になると15種類以上の生薬の組み合わせとなり、またその組み合わせの中でもどの生薬が多いか少ないかで効果などは大きく異なって来ます。西洋薬などでも成分を何種類か組み合わせた処方は存在しますが、多くの場合有効成分は1錠に1種類となります。ですから風邪で病院にかかっても何種類かの薬を処方されることになります。しかし漢方薬は複数生薬の組み合わせですから、例えば葛根湯などは、解熱、発汗、体を温める、胃腸の保護作用などがある生薬の組み合わせとなり、たった一包の葛根湯で風邪の初期症状に対応できるのです。例えると漢方薬は幕内弁当のような物で、多くの種類のおかずが入っていてそれで一食が完結するのです。

自分の状態に合わせて組み合わせる

幕内弁当でももう海老フライが食べたいとか、煮物を追加して欲しいなどの希望は誰にでもあると思います。漢方薬でも同じで、もう少し温める作用を強くしたい、もう少し胃腸を保護したいなどいろいろな希望があると思います。それを可能にするのが加味方かみほうと言って、必要な生薬を加えていくのです。

例えば当帰芍薬散とうきしゃくやくさんは女性系の代表的な処方で、優しく血流を改善し、また浮腫みを改善してくれます。つまり女性系の悩みがありかつ浮腫む人にはファーストチョイスになる処方です。しかし実際には胃が悪かったり、冷えの症状が強かったりする人が多いので、基本的に当帰芍薬散は良い気がするけど、なにか物足りないと感じる人も多いのです。その場合は幕内弁当に欲しいおかずを足すように、当帰芍薬散に必要な生薬を加味すればいいのです。生理の時に胃が重いのであれば、人参でも足しましょう、さらに冷えが強いのであれば附子ぶし乾姜かんきょうも加味しましょう。出来上がったのが当帰芍薬散合甘草乾姜附子湯となり、より細かいニーズに合った処方になりました。

ごった煮は美味しくない

そうなると今度はあれもこれも加味したいと思うこともあります。全種類入れれば病気にもならない気がします。しかしそうは行かない理由があります。

まず、一度に服用できる量は限られていますから、例えば1包2gならばその中でやりくりしなければなりません。つまり生薬の種類を増やせば増やすほど一つの生薬の量が少なくなり効果が薄まります。もちろん体質改善系の処方には多方向への効果を期待して多種類の生薬が含まれる物もあります。これらは長期に渡り服用するので(即効性を期待しない)それはそれで理にかなっています。また多種類の生薬は同時に服用すると相互作用を引き起こすこともあります。温生の生薬、冷性の生薬など、どの程度効果を打ち消し合うか計算できれば良いのでしょうが、なかなか簡単ではありません。
含まれる生薬の種類が多くても大昔より使われている処方には経験則があり長年に渡って修正を繰り返して確立されてきたものですので、ごった煮ではありません。気をつけなければいけないのは、あれもこれもと良かれと思って加味した時に気付けばごった煮になってしまうことです。極力少ない生薬の組み合わせこそベストです。

ご自身の感覚

漢方治療では自覚症状はとても大切です。

西洋医学治療では自覚症状よりも検査結果などに注目しがちですが、漢方薬の時代に現代の様な血液検査やMRIなどなかったため、この血液検査の結果に対してこの漢方薬という考えは基本的にはありません。代わりに漢方では自覚症状と脈・舌・お腹などを診察して処方を決めます。これらを脈診みゃくしん舌診ぜっしん腹診ふくしんと言います。今ひとつピンと来ないかも知れませんが、自覚症状で大まかな処方のカテゴリーを決定して、これらの診察で更にどのレベルの処方が適合するか細分化して行く感じです。自覚症状と診察より得られる情報が一致すれば治療は良い方向に進むでしょう。

例えば腹診で胃の部分を押して不自然な硬さがあったとします。これは胃の筋肉が硬くなっている、つまり胃のうごきが悪いことなので、胃もたれなどの自覚症状に繋がります。この診察所見の「胃の部分が堅い」が自覚症状の「最近胃もたれする」と一致する、その感覚の一致が治療をする上ではとても重要です。これは胃腸系のことだけではなく、月経痛や不妊症、または自律神経失調症など、全ての漢方治療において大切なことです。

患者さんの感覚を大切にしない治療とは、例えばたまに患者さんから聞くのですが、先日鍼灸院に行ったら自分では全く感じていなかったのだけど、凄く冷えていると言われて治療をされましたというような事例です。

例えが悪いですが、インチキ霊媒師の除霊のようなもので、普通に生活していたのに、いきなりあなたには悪霊がついているので直ぐに除霊が必要です、と言われ高額なお布施をすることに似ています。つまり自覚症状と診察所見が一致していないので、治療は一方通行です。治療で冷えが改善していますと言われても自覚症状は不変なので何が良いのかさっぱりわかりません。患者さんと治療者が共に同程度の尺度を持って体の状態を評価し、それ(尺度)を常に確認し合いながら治療を進められるのが理想です。

石の上にも三年・・・・!?

どのくらいの期間の治療が必要ですか?は初診の方が良くされる質問です。私は大体の改善の目安を伝えますが、その方の満足ポイントが分からないので何とも言えないのが正直な所です。西洋医学の様に検査結果が正常値に入れば終了ではありませんから、基本的には自分の満足する時点までで良いでしょう。その点、不妊症治療はとても分かりやすく多くの方は心拍確認、安定期、出産までのそれぞれ3つの時期で漢方治療を卒業されます。妊娠成立時にどの時期まで漢方飲んだ方が良いですか?とほぼ全員に聞かれますが、大半の人が心拍確認、安定期、出産までのそれぞれの時期で卒業されます。私は、自分の感覚を信じて自分で決めて下さいと答えます。またアトピー性皮膚炎などもどの程度やるかは自分で判断しやすいと思います。

その昔、私も漢方っていつまでやるのだ??と疑問に思ったことがありました。そこで偉い漢方の先生にそれを尋ねてみました。帰って来た答えが「石の上にも三年」でした。さすがにそんなアホな!やっとれるか!!・・・・と、当時思いました。

しかしふと気づくと、自分は同じ処方をもう十年以上服用し続けているし、おかげさまでまぁまぁ元気です。もし今の自分に、漢方を学びたいという医者が同じ質問したら「きみ!黙って十年だよ!」と答えるかもしれません。

もちろんこれは何を目標にしているかで大きく異なります。風邪などは葛根湯3日間程で軽快して欲しいですし、逆に生理痛などは次回の生理が来なければ結果は分かりません。ある程度時間をかけなければならない疾患でも、一気に良くなることはあまりなくて階段を上がる様に改善して行きます。しかしその一歩目は意外に早く、合っている処方ならば2週間から4週間程度で何となく良い感じが得られるはずです。本当に何となくですが、この何となく良いと言う自覚症状が物凄く大切で、この感覚が得られれば治療はスムーズに進んでいくでしょう。そして一段階変わると新たに気になる部分が出てくることもあるでしょう。その時は「自分の状態に合わせて組み合わせる」のところで書いたように、おかずを変えたり増量したりと、より細かい調整を加えて次の階段を登れるように改善して行きます。

体質改善ってなんだ??

体質改善とよく聞きますが、具体的に何をどう改善するのかイメージがつくでしょうか。よく分からずに漢方薬を言われるままに服用して、どの時点で体質が改善されたと判断するのでしょうか。いわゆる体質改善とは傾いた体の軸を垂直に戻そうと手助けすることなのではないかと思っています。

完全なる健康は寸分の狂いなく垂直に立つ棒の様な物を思い描いて下さい。しかしその棒は前後左右に少し傾くことはありますが、少々の傾きは問題になりません。例えば30度程度の傾きは正常範囲と仮定します、しかし完全なる健康とは少し違いグレーゾーンです。グレーゾーンの端に長く存在するとその棒はやがて倒れることになります。漢方的に言うとこのグレーゾーンは未病みびょうであり、病気ではないけれども完全無欠ではない状態のことを指します。未病の状態が長く続くと病気に進行する可能性がありますので、傾きは極力小さく保ちたいものです。

傾きの程度や方向を判断するのは、やはり脈診・舌診・腹診などの診察所見に基づきます。実際には棒が傾いているなどとは言わずに、肝腎虚証で瘀血気滞など漢方特有の診断で傾きを表現し、それに対応した処方を組み立てて行くことになります。さて体質改善とはこの傾いた棒を極力垂直に近付けることです。

繰り返しになりますが、たとえ棒が垂直になったからと言っていきなり体感が出るものではありません。気付かないうちに体質改善は進行し、ある時点で振り向けば「そう言えば最近は風邪をひかなくなった」などと感じられれば良いのです。これは婦人科系などでずっと漢方を飲んでおられる方がよく実感されます。最初の来院目的は婦人科系の疾患の改善だったのが、ずっと続けているうちに体質改善になってしまう、これは当然のことです。と言うのも婦人科系の処方の基本は血流改善になりますから、血流を良くしたり体を温めたりをしていくと軸の傾きはどんどん改善されます。基本的に直面する症状を改善させながら軸を正常に戻すのが漢方治療ですから、当院におかかりの多くの方々は気付かない間に体質改善が進行していると思って下さい。しばらくぶりに来院されて、漢方を飲んでいた頃は調子良かったのだけど、とおっしゃる方は多いので、お心当たりのある方はまた漢方を体質改善を理由に再開してみるのも良いでしょう。

女性の体質改善は、毎月の生理や冷え性の改善、更には血流改善で皮膚の状態もよくなりますので、実は体感が出やすいのです。しかし男性の場合はなかなか体感ポイントがありませんので正直言って難しいものがあります。体感できなければ飲み続けることは困難です。むしろ何か気になる症状、例えばお腹が張る、足が冷える、下痢気味であるなどがあればその辺りの症状を目標に体質改善をしていけるので、治療としては分かりやすいかと思います。自分の場合も症状はなかったのですが、体質改善系の処方を何となくずっと続けていますが、今更ながら風邪もひかないしコロナにもならずフルマラソン走っても体の疲労はあまり残らない(筋肉疲労はありますが)ので、そう考えると効果はあるのだなと思っています。

これぞ理想のオーダーメイド治療

基本的に漢方はオーダーメイド治療です。その人に必要な生薬を必要な分量だけ投与し反応を診て、そこにさらに生薬を加えるあるいは減らすなどの作業を行います。しかし一つずつ生薬を選ぶのは大変だろうし、それには多くの経験や知識が必要になる、そこで長年の経験則に基づいた多数の処方が作られて来ました。最初に書いた葛根湯や当帰芍薬散などの名前がついた処方(いわゆる既成の処方、元からある処方)です。これらの処方はその場の思い付きで作られた物ではなく、生薬を加減しながら現存する完成系となり、完成後は何千年に渡り多くの方に処方されて来ましたので、適切に使えれば効果はあるはずです。そもそも効果がないものは淘汰されて何千年後まで残りません。効かない場合の大半は適切に使用(処方)していないからとも言えます。

しかし人の顔や性格が異なるのと同様に、体質や病態の組み合わせは無限にあるので、既成の処方で満足する結果が得られない場合も多々あります。またある程度までは改善するがそれ以上の効果が期待できない場合もあります。その場合は漢方の基本に戻り既成の処方に単独成分を加えたり、また不必要そうな成分を減らしたり抜いたりするオーダーメイド処方で体調体質により合わせて作成する必要があります。

どこまでオーダーメイドで細かく作成すれば良いか、突き詰めて行けば、毎日同じものを食べ続ける人がいないのと同様に、漢方薬も毎日の体調で変えた方が良いのかなど疑問が湧いてきます。朝昼晩と食べるものが異なるので、漢方も1日の中で適宜変更するのが良いのかなどと思ってしまいます。もちろん漫然と同じ物を長期に続けるのは最善の方法ではありませが、それで調子が良いのであれば、同じ物を継続するのは問題ないでしょう。

逆にこう言う時に、もう少し手を加えるともっと良くなるのではと欲を出して処方に手を加えることがありますが大抵結果は良くありません。最大の問題はそれでダメなら元に戻せば大丈夫ではなく、何かしっくりこなくなるのです。この辺りの見立てはとても難しく、また良い状態に戻すには多くの経験と注意深い観察が必要になります。

細野漢方診療所 院長 細野孝郎

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