• 内科医師からスタートし、現在は三代続いている漢方専門のクリニックを銀座で開業中。女性系疾患(月経関連、更年期、 不妊症など)、アトピー性皮膚炎などから、ちょこっと体の弱い人までお見えになります。趣味はマラソン(基本的にはインドアでテレビ派)、猫(アメショ)、週に1回の外食。マラソンはsix stars finisher(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク)日本人では338人目位の達成!!

ここ最近、加味逍遙散に関係する検索が多く、女性系の有名処方、当帰芍薬散か加味逍遙散どちらを買おうか、お悩み解決(1)などは、ヒット数1万件に迫ろうとしています。書いた当時は、当帰芍薬散と加味逍遙散で悩む人はいないだろうと思っていたのですが、意外な物が受けたと言う感じです。過去記事もリンクより見返して頂きたいのですが、基本的には気の流れ、血の流れを整える系統の処方で、作用は比較的マイルドです。タイトルに上位互換処方と書いたのですが、これは加味逍遙散をより強烈にした感じで、より強く作用すると考えて下さい。

思い起こせば、自分が漢方を処方し始めた頃は、今から40年近く前になりますが、加味逍遙散か桂枝茯苓丸、または当帰芍薬散の3択みたいな感じで処方していた記憶があります。総合病院でリウマチ外来を担当していたので、どうしても40代、50代女性の患者さまが多く、リウマチ膠原病に合わせて更年期様の症状で悩んでいる方が多かったのです。その頃は当然漢方などに詳しくはないし、そこまで興味もないしで、頼まれて出していた感じです。なので今横で同じことをしている人がいたら鼻で笑ってしまうレベルです。なのでAさんが加味逍遙散が良く効くので処方して欲しいと言えば、同じ様な症状を訴えているBさんにお勧めして処方するみたいなレベルでした。ですから、そんな程度でやっているので加味逍遙散が効かないです。当時は医局に漢方メーカーのMRも自由に出入りしていたので尋ねてみると、更年期みたいな方でイライラが出る人に使って下さい、みたいなこと言ってパンフレットくれるのですが、やはり効かない!そして当然のことながら漢方なんて効かないじゃないか!と言う結論に至ります。これ多分今でも同じ経験をしている同業者も多いと思います。

知識もあまりなく(今でも?)根拠の低い処方しか出来なかったので、加味逍遙散だけではなく、アレもコレも効いた感じなく、処方する気も失せて来ました。その時点での大間違いは、加味逍遙散を処方する根拠は更年期とイライラだけだったと言うことです。更年期とイライラだけだったら、桂枝茯苓丸でも良いし、桃核承気湯でも良いし、抑肝散系統でも良いし・・・・・・と書き出すとキリがありません。問診から得られるもっと多くの症状、腹診や舌・脈診などから、加味逍遙散に合致するとそこまでは外しません、「前より良い感じ!」と体感が出ると思います。いきなり初っ端から加味逍遙散が効くのか、それとも他の処方を使って少し体を動かしてから次の手で加味逍遙散を使えば効くのか、難しいのですが、この辺りも凄く重要なことと認識しています。そう言えば、何の処方か忘れましたが、ウチの父親に「こんなの効かないじゃないかー!」と言うと、「それが効かないのではなくてお前の使い方が悪いんじゃ、勉強せいバカモノ!!」と延々と怒られた記憶があります。そう言えば祖父の本に、「漢方が効かないのではなくて、単に使い方が悪いから効かないだけだ」と書いてあったはずです。少なくとも先にその本を読んでいれば、そう言うことを言えば危険だと察知できたのですが(笑)

週末は漢方系の学会でした。大きな会なのでそれに合わせて外国からも参加される方々もおられます。今回は韓国からお見えになった先生方が当院を見学したい!?と言うことでお見えになりました。

適当に処方されて副作用が出るのは向こうも同じらしく、そういう使い方にはかなり憤慨されていました。外国の先生も同じこと考えているんだなと思い、かなり気が合いました(笑)国際東洋医学会と言うのがあって、日本や韓国、台湾などで学会が開催されているみたいなのですが、せっかくこうやって知り合う機会を頂いたので一回見学に行こうかなと思いました。新たなる気付きがありそうな感じがします。しかし手土産に頂いた韓国のお菓子は美味しかったです。ちゃんとお礼も言えずに申し訳ございませんでした。

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