• 内科医師からスタートし、現在は三代続いている漢方専門のクリニックを銀座で開業中。女性系疾患(月経関連、更年期、 不妊症など)、アトピー性皮膚炎などから、ちょこっと体の弱い人までお見えになります。趣味はマラソン(基本的にはインドアでテレビ派)、猫(アメショ)、週に1回の外食。マラソンはsix stars finisher(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク)日本人では338人目位の達成!!

一連のお話は加味逍遙散の過去記事を読んで頂いた上での話ですが、とりあえず今回のシリーズを(1)とリンクを貼ったお悩み解決(1)あたりに目を通して頂ければと思います。

今回は通導散を使って感じたことを書いてみようと思っています。あくまでも自分が長年、多くの方々に使っての経験に基づく感想なので本に書いてあることと若干異なる部分もあります。基本的に通導散はベースに大承気湯などを含むので、実症(体強めの方)向けの処方となります。虚証気味(体弱めの方)にはダメかと言うと意外にそうでもありません。高齢の方や明らかな虚証(本当に体弱そう)の方には当然NGです。あともちろん、お腹の弱い方には絶対にダメです。そう考えると、基本的に体が丈夫で便秘気味の人、教科書通りのタイプの人は最適となります。通導散で一番難しいのが作用の一つである便のコントロールです。2日に1回程度しか便が出ないレベルなら、通道散で便秘も解消するだろうと思って処方すると全くビクともしない、これはしょっちゅう経験します。逆に3〜4日に1回程度しか便が出ない人がいきなり快便になったりもします。逆に毎日普通に出ている人、こう言う方には通常は処方しないのですが、「お腹壊しても良いから通導散を試したい!」と頼み込まれていた仕方なく出しても、2週間服用しても全く変化ない、などの例も多数経験して来ました。結果がどう出るか予測しにくい処方は使いにくいし、使うにも経験が必要になります。じゃあそんなもの出さないでくれよ!と普通思われでしょう。

これも自分の経験上なのですが、いろいろな処方を見比べて、含まれる大承気湯や調胃承気湯類の濃さにより通便作用が左右されます。つまり当院使用の物であれば、桃仁承気湯や桃核承気湯が最強レベルで5日とか一週間で出ない程度、大黄牡丹皮湯だと3日程度、桃核承気湯加減(オリジナル)だと2日程度の便秘の方に最適だと考えています。もちろん桃仁承気湯を半量に減らして使うこともあるので、2〜3日しか便秘していないのに桃仁承気湯出されているぞ!と思う前に服用量をご確認下さい。で、この法則に則ると通導散は2日に1回程度の便秘の方に適応になるのでは?と思えます。しかし結果は上記のように強く反応したり弱買ったりとバラツキが出てしまいます。

なぜこう言うことが起きてしまうのか自分なりに考えると、今回のシリーズの第2回目に書いた表を見て頂きたいのですが、厚朴、枳実、陳皮と気剤ががツンと3種類入っているからだと思います。いつも気の流れを整える生薬と大雑把に言っていますが、体のどこの気の流れを重点的に整えるのか?と疑問に思われた方もおられるかも知れません。通導散に含まれるこの3つの生薬は腹部(消化管)の気の流れを主に改善する作用があります。頭の気の流れを良くしたい、胸の気の流れを良くしたいとなると何かを加えるか、それとも他の処方を選択した方が良いでしょう。この「気の流れ」(消化管の動き)は少しのキッカケでいきなり動き出したり止まったりします。突然お腹がグルグル鳴り出したり、いきなり吐き気が出たりは多くの方が経験されてるはずです。私の勝手な推測ですが、この厚朴、枳実、陳皮などが体質によって過度に反応することがあると思っています。さらに大黄や芒硝の作用もこの反応を過敏にさせているのではとこれまた想像しています。なのでこの通導散がビタッと当てはまる方は多くないと思うのですが、当たった時にはガツンと気の流れを良くして一気に体調を良くする破壊力満点の効果をもたらせてくれます。使い方が難しく適応範囲が狭いけれども、当たるとホームラン確率が高い処方です。

以前よりちょっと行ってみたい所があり本日はお休みしております。電話でのお問い合わせとズーム遠隔診療のみになります。

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                                             細野孝郎