新型コロナウィルスに対して防御を固めて迎え撃つ「攻める予防」を!

発熱してしまった時:攻める予防1 当院の「清肺排毒湯」

テレビをつけると新型コロナウイルス感染症関連の暗い内容ばかりで気が滅入ってしまいます。最終的には誰もがいつかは感染して免疫を獲得するより他ないのかもしれませんが、この恐ろしい敵を素手のまま待つのはなんとも心細いものです。そもそもただ待っているだけでは芸がありません。残念ながら西洋医学でも未だこれと言った処方もなく、アビガンを適当に服用するわけにもいかず思い悩んでいたところに、他の漢方先進国の発信する情報を目にして、これは私たちも忠実に見習うべきではと考えました。

憎きコロナがやって来るのを何もせずに待つのではなく、より強固な防御ラインを構築して待ち構える、そして万が一にもコロナウイルスが防御を突破して体内に侵入した時は隠し持った秘密兵器で攻撃する。まさに漢方治療の基本姿勢でもあります。

この「攻める予防」こそが、Stay at homeと共に私たちの今できる最善の方法であります。幸いにも当院は小回りの効く漢方専門の診療所で保険診療の壁がありません。早速、中国・台湾・韓国の漢方先進国で治療のガイドラインに掲載されている処方を作ってみました。

清肺排毒湯せいはいはいどくとう」は中国、台湾、韓国では新型コロナ感染症治療のガイドライン(中国国務院、大韓医学協会、台湾の国家中医学研究所)に使用すべき漢方薬として掲載されています。これらの国では軽症から重症の新型コロナ感染症患者に幅広く使われ、効果的な治癒率は90%程度です。日本感染症学会の特別寄稿文の中でも「清肺排毒湯」が幅広く用いることができると紹介されています。

当院では万が一のための常備薬としても使えるように日本人に合うように調整して作成しました。

中国や台湾、韓国では積極的に予防〜治療まで漢方薬が用いられていて、国の定める治療のガイドラインにもいくつかの効果的な処方が推奨されています。それらのことが功を奏してか、台湾の感染者数はいまだ426人(4月23日現在)とごく少数で推移しています。アビガンは一定の効果が認められていますが、一般には入手が不可能で簡単には投薬してもらえません。現状の日本では、ある日いきなり熱が出ても特に薬はなくコロナ感染症に怯えつつ何日かは自宅待機で様子をみなければなりません。この様な時に、中国、台湾、韓国で新型コロナ感染症に一定の効果が見られた漢方薬が手元にあればなんと心強いことかと思います。

日本感染症学会のホームページ上に特別寄稿文として「COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方」(金沢大学付属病院漢方医学科 小川恵子先生)を掲載しました。そしてその中で清肺排毒湯を幅広い病態に用いることのできる処方として紹介しています。

清肺排毒湯は遠い昔3世紀頃、漢の時代に湖南省の知事である張仲景ちょうちゅうけいによって書かれた「傷寒雑病論」に記載されている処方を組み合わせ考えられた処方です。日本では葛根湯や麻黄湯などのインフルエンザに使う処方がメジャーでしたが、今回の新型コロナウィルス感染症にはこの組み合わせが有効だということが分かってきました。

清肺排毒湯は中国ではすでに2月の時点で国家中医薬管理局より新型コロナウイルス感染患者701名に投与しその治療成績を発表しています。701名中、130名の方が治癒・退院、51名の方で症状消失、268名の方は症状が改善、そして212の方で症状の悪化を食い止めた、結論として優れた臨床効果を持つと記載されています。

詳細まで検討分析できた351名で、37.3度以上の発熱があった112名の方のうち、51.8%の方が「清肺排毒湯」を服用後1日で解熱され、6日後には94.6%の方が解熱されました。また351名中、214名の方は咳の症状がありましたが、46.7%の方がお薬を服用後1日で咳の症状がなくなり、6日後に咳の症状が消失した方は80.6%にのぼりました。

これらのことより清肺排毒湯の効果的な治癒率は90%と記載されているのです。

「清肺排毒湯」は21種類の生薬より構成されます。こちらを少量常備して頂いて、疑わしい症状が出た際に服用していただければと思います。そしてすぐにご連絡ください。熱や咳の症状などを細かく伺って、清肺排毒湯がより効果的に作用するよう追加のお薬をお送り致します。

普段から備える:攻める予防2 感染予防のための漢方処方を服用する

感染リスクの低い方は、基本的には、今現在服用されている漢方をそのまま服用されていて構いません。しかしどうしても仕事で外出しなければならない方、特に公共交通機関や医療関係にお勤めの方は不特定多数と接触する機会が多いのでハイリスクです。そのような方は予防用の漢方薬を服用することが推奨されています。

台湾国家中医学研究所ガイドラインに新型コロナウイルス感染症に対する予防薬としては、以下の2処方が挙げられています。

A)黄耆、荊芥、甘草、生姜、板藍根ばんらんこん魚腥草ぎょせいそう、薄荷、桑葉
B)荊防敗毒散、魚腥草、板藍根

Aの処方はご覧の通り、8種類の生薬の組み合わせで名前はついていません。当院では便宜上、耆荊板藍根湯ぎけいばんらんこんとうと呼んでいます。またBは荊防敗毒散けいぼうはいどくさんという皮膚疾患の時に使う処方を基本に、魚腥草、板藍根などの解毒系の生薬を加えて構成されています。皮膚疾患もウイルス感染も、最初に体の外部に接する部分(皮膚・気道)から侵入するため、まずはその部位より追い払うという考えに基づき両処方とも組み立てられています。またB処方はAと違い17種類の生薬より構成されます。比較的作用は穏やかで多岐に渡るため解毒体質への体質改善薬としても効果的でしょう。逆に耆荊板藍根湯は8種類の生薬から構成されるので、一つ一つの含有量が多いためより強い作用を期待できるのではないでしょうか。どちらの漢方が良いのかは、その方のこれまでの経過や現在の体調等を考慮して医師が判断しますので、どうぞご相談下さい。

人類の経験したことのない感染症に対してあまり断定的なことは言えませんが、新型コロナウイルスの封じ込めに成功している国の中医学研究所が推奨する処方ですので「攻める予防」として、また発熱してしまった時などに、積極的に取り入れる価値は十分にあるでしょう。

新型コロナウイルス感染症の予防や治療にはこれと言った正解はありません。唯一の正解は人と接触せずに、宅配も玄関前に置いてもらい家で永遠に一人きりで過ごすことです。これこそ「守りの予防」の真髄ですが、これを何ヶ月も続けるというとそういう訳にはいきません。いつか守りの姿勢から攻撃に転じるしかありません。そこで当院では「攻める予防」として3種類の漢方薬ご紹介いたしました。みなさまご自分にあった方法でこの難局を乗り越えて行きましょう!

COVID-19感染症に対する漢方治療について、日本感染症学会や日本医事新報社のサイトに清肺排毒湯などに関してより詳細な記載がございます。

日本感染症学会
(特別寄稿)COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方(改定第2版)および(寄稿)中国におけるCOVID-19に対する清肺排毒湯の報告
http://www.kansensho.or.jp/modules/news/index.php?content_id=147

日本感染症学会
COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方(特別寄稿)
http://www.kansensho.or.jp/modules/news/index.php?content_id=140

日本医事新報社
[緊急寄稿]新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する漢方の役割(渡辺賢治ほか)
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14426

院長 細野孝郎

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この記事を書いた医師

院長【細野漢方診療所責任者】

細野 孝郎(ほその たかお)

漢方では、体を整えることで、病気を治したり、また病気になりにくい体作りをします。体のことでお悩みの方はもちろん、現在は健康だと思われている方も、ビタミンを摂るように、自分に合った漢方をみつけて、健康で楽しい人生を送りましょう。

昭和63年北里大学医学部卒 
日本東洋医学会認定医国際抗老化再生医療学会名誉認定医国際先進医療統合学会理事千代田区医師会所属

川崎市立井田病院、藤枝市立志太病院、北里大学病院などを経て現在に至る。
北里大学病院では、膠原病・リウマチ・アレルギー外来を経て、漢方外来設立に尽力、担当。
1992年より聖光園細野診療所でも診療を開始。2021年12月法人(聖光園)から独立して細野漢方診療所として開設し診療を継続中。
得意分野:内科系疾患全般、月経困難症や不妊などの婦人科疾患、皮膚疾患。また、体質改善や健康維持など、加齢にともなうエイジングケアの漢方にも力を入れている。
趣味:猫、洗濯、料理、掃除、フルマラソン(サブフォー、ロンドン、シカゴ、ニューヨーク、ベルリン、フランクフルト、香港、東京、大阪、京都、神戸)など。