アトピー性皮膚炎の漢方治療
Atopic Dermatitis · Hosono Kampo
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【アトピーの根本原因】皮膚は内臓を映す鏡
「アトピー性皮膚炎の原因は一つではありません。免疫異常・皮膚バリア機能の低下・ストレスによる自律神経の乱れ・食事・気候など、様々な要因が複合しています。漢方ではこれを『気・血・水』の乱れと捉えます。特に重要なのが『解毒機能の低下』です。胃腸の消化吸収が弱いと体内に不消化物が蓄積し、便・尿で排出しきれなかったものが皮膚の弱い場所から漏れ出してくる——これがアトピーの正体です。皮膚は内臓の状態を映す鏡。だから塗り薬で蓋をするだけでは、また内側から溢れてきてしまうのです。」
【治療の4段階】炎症を抑える→血流改善に着手→血流改善本格化→体質改善
「細野漢方のアトピー治療は4段階で進めます。第1段階は『赤みを抑える』——炎症・熱感が強い時期はまず冷ます処方から入ります。代表は黄連解毒湯(おうれんげどくとう)です。ただし長期間使うと皮脂腺を抑制して逆に乾燥を招くため、炎症が落ち着いたら次の段階へ移ります。」
「第2段階は『皮膚の血流改善に着手』——温清飲(うんせいいん)の出番です。黄連解毒湯と四物湯(しもつとう)を半量ずつ合わせた処方で、炎症を抑えながら皮膚の血流改善に着手します。ただし炎症がまだ強い時期にいきなり温清飲を使うと逆効果になります。四物湯は皮膚の血流を改善する処方ですが、炎症が強い時期に飲むと、ちょうどお風呂で血流が良くなって痒くなるのと同じ原理で症状が悪化します。これは瞑眩(一時的好転反応)ではなく単なる悪化です。順序が何より大切です。」
「第3段階は『皮膚の血流改善本格化+皮膚のきめを細かくする』——四物湯系の処方が問題なく飲めるようになったら、皮膚を正常に戻す治療を本格化します。アトピーの皮膚は炎症が繰り返されるためきめが荒く、体内の不要物が漏れ出しやすい状態です。皮膚のきめを細かくする代表的な生薬として、皮膚を強くする黄耆(おうぎ)、美肌・炎症ダメージ回復に働く薏苡仁(よくいにん/ハトムギ)などを組み合わせます。」
「第4段階は『解毒体質の完成』——皮膚のきめが整ったら、体の内側の解毒機能を底上げします。体内のデトックスが進み、皮膚が丈夫になれば、外に漏れ出にくい体が完成します。色素沈着も徐々に改善し、引っ掻いても悪化しにくい凛とした皮膚へ。これが三代が目指してきたアトピー治療の最終目標です。」
【症状タイプ別処方】赤み・乾燥・ジュクジュクで変わる
「同じアトピーでも、皮膚の状態によって処方はまったく異なります。赤みや熱感が強いタイプには黄連解毒湯を中心に、顔の赤みには桂枝・石膏などを加味します。夏に悪化するジュクジュクしたタイプには消風散(しょうふうさん)や越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)が有効です。冬の乾燥・夜の痒みが強いタイプには当帰飲子(とうきいんし)を検討します。乾燥があるが四物湯が合わない人には加減一陰煎加亀板膠(かげんいちいんせんかきばんきょう)という当院の得意処方があります。皮膚のきめを細かくする生薬として黄耆(おうぎ)や薏苡仁(よくいにん)も重要な役割を果たします。解毒・化膿しやすい体質には十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)が基本となります。」
【ステロイドとの考え方】無理な脱ステは不要
「漢方的に考えると、ステロイドは皮膚の排出口を一時的に閉じているものです。中に押し戻された毒素は、漢方で解毒すればよい——と割り切って考えてください。無理に脱ステロイドを急ぐ必要はありません。ステロイドで症状を管理しながら、漢方で体の内側の解毒力・血流・体質を整えていく。解毒が進み皮膚が丈夫になれば、自然とステロイドの必要量が減っていきます。リバウンドを起こさず、じっくりと離れていくのが理想です。」
【女性のアトピー】月経周期と連動する皮膚症状
「女性のアトピーで見逃されがちなのが、月経周期との関係です。排卵後から悪化し、生理が始まると少し楽になる——このパターンの方は、生理痛・経血の塊・月経不順など瘀血症状を伴うことが多いです。この場合、瘀血を改善するだけでアトピーが劇的に改善することがあります。四物湯・桂枝茯苓丸・桃核承気湯・大黄牡丹皮湯などの女性系処方を、アトピー治療の段階に合わせて組み込んでいきます。ただし女性系処方は炎症が落ち着いた第2段階以降でないと逆効果になるので注意が必要です。詳しくは女性のアトピー性皮膚炎のページもご覧ください。」
【ストレス・気の滞りと痒み】抑肝散の出番
「ストレスや精神的な緊張で痒みが増す方には、抑肝散(よくかんさん)が有効なことがあります。長期のアトピーで心身ともに疲弊している方、夜間の痒みで眠れない方にも、気の流れを整える処方を加えることで痒みのコントロールが改善します。また、ニキビや化膿しやすい皮膚炎には排膿散(はいのうさん)が思った以上に効果を発揮することがあります。」
【実際の臨床では】複合した状態に一人ひとり対応する
「顔は赤くてジュクジュク、でも腕は乾燥してカサカサ——実際の患者さんはこうした複合した状態が多いです。さらに更年期のほてりが重なる方、生理周期で悪化する女性、ステロイドを長年使ってきた方、食物アレルギーも抱えている方——それぞれまったく異なるアプローチが必要です。白虎加人参湯(びっこかにんじんとう)が必要な激しい熱感の方もいれば、体を温めながら解毒を進める処方が合う方もいる。画一的な処方では決して辿り着けない領域が、三代98年の診察経験には存在します。」
症状と処方の対応 — ひと目でわかる一覧
| 症状・状態 | よく使われる処方 |
|---|---|
| 赤み・熱感が強い (炎症第1段階) |
黄連解毒湯 白虎加人参湯(激しい熱・口渇) |
| 炎症+乾燥 (第2段階・移行期) |
温清飲(黄連解毒湯+四物湯) |
| 皮膚の乾燥・血流不足 (第3段階) |
四物湯 加減一陰煎加亀板膠(四物湯が合わない乾燥タイプに) |
| 夏に悪化・ジュクジュク 浸出液が出る |
消風散(しょうふうさん) 五物解毒湯(ごもつげどくとう) |
| 冬の乾燥・夜の痒み 色素沈着 |
当帰飲子(とうきいんし) 四物湯 |
| 皮膚のきめを細かく 体質改善・美肌 |
黄耆(皮膚を強くする) 薏苡仁・ハトムギ(皮膚回復) |
| 解毒・化膿しやすい肌 繰り返す皮膚炎 |
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう) 排膿散 |
| ストレスで悪化する痒み 夜眠れない |
抑肝散 |
| 女性・月経周期で悪化 (瘀血タイプ) |
女性系処方との組み合わせ(詳しくは女性のアトピーページへ) |
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※ 実際の処方は診察の上、あなたの「証」に合わせて0.1g単位で調整します。
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三代、受け継がれる漢方の知恵
細野 史郎
創始者(初代)
1928年開院
細野 八郎
二代目院長
細野 孝郎
現院長(三代目)