• 内科医師からスタートし、現在は三代続いている漢方専門のクリニックを銀座で開業中。女性系疾患(月経関連、更年期、 不妊症など)、アトピー性皮膚炎などから、ちょこっと体の弱い人までお見えになります。趣味はマラソン(基本的にはインドアでテレビ派)、猫(アメショ)、週に1回の外食。マラソンはsix stars finisher(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク)日本人では338人目位の達成!!

今回は最初に概略を・・・・

喉のつまり感とは、「気」の滞りが原因で、喉に微小な浮腫(水滞)が生じたり喉の筋肉群が過緊張となり気になる状態。そこに半夏厚朴湯がどの様に作用するのか。今回はその原因が喉の気の滞りが主体であり、主に半夏厚朴湯が効く場合についてです。

そもそも喉のつまりって??

喉がつまった感じがする、いつも何か挟まっている気がする・・・・これらの症状は大昔から存在し、梅核気(ばいかくき)とか咽中炙臠(いんちゅうしゃくらん)と言う漢方的な呼び名が存在します。読んで字の如く梅の種が喉に引っ掛かった感じ、炙った肉の塊が喉につっかえた感じです。こう言う症状が出てくると、喉に何かできたのではないか?と心配になり耳鼻科を受診して、内視鏡などで検査されることでしょう。ポリープなどがあれば処置してもらえば良いのですが、検査の結果何もなく「気のせいです」と言われれば、そこで漢方の出番になります。繰り返しですが、まずは耳鼻科を受診して器質的な疾患がないかを確認して下さい。

気のせいをネットで調べてみるとgoo辞書に「実際にはそうでないのに、自分の心の状態が原因でそのように感じられること。」と記載されていました。また気のせいを漢字で書くと、気の所為となり、意味する所は「気のしわざ」、になります。つまり喉のつまり感は、耳鼻科的に問題がなければ気の所為なんです。

誰のせい?、気の所為!!

漢方では「気」の存在をとても大切にします。気が足りない状態や、気の流れの悪い状態を気虚や気滞と呼んで、体の種々の不調の原因と考えています。気の悪い人は過緊張で力が入って筋肉も緊張(痙攣状態)しがちです。また過去にも書いていますが、気の問題が血の問題を引き起こし、婦人科系疾患に関係したり、また気の悪さそのものが自律神経失調症と関係したりもします。不調な気はさらに「水」の流れも阻害し、それが微小な浮腫となり違和感の原因ともなります。

気は体内を山手線(大阪の人は環状線、シカゴの人はループ)の様にクルクルを循環していますが、停滞しやすいポイントがあります。それが喉の部分となり、その場所で気の流れが悪くなり詰まってしまうことが「喉のつまり感」です。

これらのことより漢方的な喉の詰まりとは、喉の部分(詰まりやすい箇所)の気の滞りなどにより喉の筋肉が過緊張してしまう、更には水分が鬱滞し、少し浮腫んでいることなどで喉が詰まった感じがする。だと思います。

皆さんの周りにいる常にウンウンと咳払いをする人(うちの父親もこれでした、周囲はうるさくてたまらんです)もこの様な状態かと思います。また風邪を引いて喉を痛めた場合などでも、喉が炎症で浮腫み、気になって気になっている内に力が入って喉の筋肉が緊張して、何かいつも喉にある感じに変化して行くのではないでしょうか。

漢方での治療

治療は単純明快、喉の部分で気の通り道を作ってあげれば流れが再開し症状も軽快するでしょう。服用1週間程度で何となく良い感じを実感できると思います。この時に使用する代表的な処方、と言うか、もうこれしかない的な処方が半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)になります。あまりにも有名な処方で、喉のつまりだけをターゲットにして漢方を良く知らないお医者さんが適当に処方してもかなりの確率で治ってしまうほど使いやすい処方です。これは薬局で皆さんが購入することも可能です。

ここで問題は半夏厚朴湯でびくともしない場合です。その場合は気の詰まりが喉だけではなく、他の部位にも同時に存在していることがあります。または、通り道だけ作っても自然に気が流れない場合、これは他に気の流れを阻害する原因があるのですが、その場合はその原因も治さないと気は流れません。女性では血の流れの悪さと気の流れの悪さをが絡み合って足を引っ張り合っていることがよくあります。次回はこれらの治療方法について書くことにします。

半夏厚朴湯について

半夏厚朴湯について簡単に解説しておきます。半夏厚朴湯は、半夏、厚朴、茯苓、蘇葉、生姜の5種類の生薬より構成される単純な処方です。漢方的には喉の詰まりは、内視鏡では見えないほんの微小な水分鬱滞状態(つまり浮腫があり、それが気になる)が関与すると捉え、いわゆる水毒の一種とも考えています。半夏厚朴湯を構成する、半夏と茯苓にはこの水分鬱滞を解消する作用があります。半夏は溜まった水を流すための水路を作り、茯苓にはそのまま乾かす作用があるそうです。但しこれは漢方独自の考えであって、現代の薬理学的に正しいかはどうかは不明です。厚朴には利水作用だけではなく、気の流れを整える作用があるので、喉の部分の緊張を和らげて症状を緩和します。更に蘇葉は中枢性の鎮静作用があるため、筋肉の過緊張にはとても効果があるでしょう。

この様に半夏厚朴湯は気の流れを整え筋肉を和らげ、更には浮腫を解消することにより喉の違和感を和らげる漢方です。

話変わって、ここのところ腸内細菌が見直されていると言うか、重要性が再確認されている感があります。コロナ感染症が広がる前から、インフルエンザ流行の時期になると免疫力を高めると言われているR1乳酸菌が売り切れになったりしていました。私も10年以上前からこの手の乳酸菌飲料をずっと続けています。この年齢でも何とかフルマラソンを走れるので、漢方と乳酸菌のおかげで調子良いのだろうと思っています。しかし先日、気になる物を発見してしまいました!どうやら自律神経がリラックスできそうな乳酸菌飲料です。ただ今愛飲している物や漢方も同じ物を10年以上続けて調子が良いのに、ここで今更欲を出してしまうと大抵は失敗してしまいます。(これとても大切で、ずっと同じ漢方で調子良かった人が、そろそろもっと上を目指したいとなり処方を変更すると大抵はしっくり来ません)とは言え、これは試さないと気が済みません。で買ってみたのは良かったのですが、成分表を見るとカロリーが100mlあたり65kcalあるのでこれもまた悩ましい所です。最近は猫が横で幸せそうに寝ていて、そのおかげで熟睡して朝まだまだ寝れそうな日が続いているのですが、それでもこれを今の乳酸菌にプラスで試したくてしょうがありません。また結果は報告できればと思います。

Asahi飲料のweb(https://www.asahiinryo.co.jp/calpiskagaku/)を見ると副交感神経活性があるそうなので、意外に喉のつまり感も和らぐ!?かも知れません。こういう物も上手に漢方と併用していけば体調は更に良くなると思いますので、色々と試して自分に合った物を見付けて下さい!
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