• 内科医師からスタートし、現在は三代続いている漢方専門のクリニックを銀座で開業中。女性系疾患(月経関連、更年期、 不妊症など)、アトピー性皮膚炎などから、ちょこっと体の弱い人までお見えになります。趣味はマラソン(基本的にはインドアでテレビ派)、猫(アメショ)、週に1回の外食。マラソンはsix stars finisher(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク)日本人では338人目位の達成!!

女性系の漢方薬は数多くあり、どれを選ぶかは大変迷う所です。みなさんが薬局で選ぶ時も、あれやこれやで選ぶのは悩ましいと思います。大昔から多くの人が女性系疾患で悩んで来たからこそ、多くの処方が存在するのです。今回のお題は、「大雑把に考えて」、もし「みなさんが人が薬局で選ぶなら」と言う感じで書いてみます。

女性系疾患と言っても、月経痛から更年期、不妊症に内膜症など種々の状態がありますが、便宜上これらをここでは一纏めにして「女性系疾患」とします。

そもそも瘀血(おけつ)って何だろ?

漢方では女性系疾患の原因を「瘀血」(おけつ)と呼んでいます。漢方薬のテレビCMでも瘀血と言う言葉が使われているので、なんとなく聞いたことある方も多いと思います。瘀血には二つの状態があり、(a)血液の流れの悪い状態 (b)血液の質が悪い状態、があります。実際には両者が同時に存在することが多いと思われます。もちろん治療(漢方薬)は(a)と(b)では異なり、また両者混在の場合どちらがメインを占めるかによっても選択する処方は異なります。

まず(a)の血流の悪い状態は何が問題かと言うと、当然体の血流が悪いと、冷える凝るだのと良いことは全くないのですが、子宮卵巣系の血流が悪いと卵巣の働きが正常に保てずにホルモンバランス(女性ホルモンなど)が乱れて来ます。そうなるとタイトルにある婦人系特有の症状が出てしまいます。また子宮の血流が悪いと内膜の発育も悪く、子宮内環境もよろしくありません。

(b)血液の質が悪いことの問題は、例え血流が良くとも程度の悪い血液が回って来ては体の組織は上手く機能しません。いわゆる貧血、各器官の栄養不足状態です。これでは女性系疾患どころの話ではなくなって来ます。女性系に結びつけて考えると、血液の質の悪さは子宮内膜の厚さに影響を与えるでしょう。つまり不妊症などの原因の一つと考えられます。

治療の方針(薬を買う時の考え)はこの両者の存在割合、またはその時の優先順位によって決めなければなりませんが、これはとても複雑なのである程度の治療経験がある人(医師)が考えないと無理でしょう。

結局そういうオチかとガッカリされると困るので、ザックリと割り切って一つ具体的な処方を提案をしてみます。

具体的な処方として

(a)に対して桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、(b)に対して四物湯(しもつとう)です。みなさんネットを調べると、桂枝茯苓丸は実証(体力ある人向け)タイプと書いてあるでしょう。中に含まれる牡丹皮、桃仁でお腹を下すことがあるからです。なので今回一つだけ条件を付けるならば、体質が中等

度、いわゆる普通〜丈夫な人向けです。いかにも虚弱体質な人は桂枝茯苓丸は合わないかと思います。(そう言う体質の人にあまり処方したことないので、どうなるかは断言できませんが、恐らく下すのかと思います。)

最大のポイントは桂枝茯苓丸と四物湯を両方服用することです。自分の瘀血が(a)なのか(b)なのかなんて判断できませんし、ましてや(a)>(b)なのかその逆なのか分かりません。

提案としては、桂枝茯苓丸を半量(あるいは2/3量)、四物湯を半量(あるいは1/3量)です。二つ買って、上手に自分で調合すれば良いかと思います。半量あるいは2/3としましたが、問題なければ2/3から開始しても良いでしょう。これが良く言う匙加減の第一歩です。

これで(a)(b)どちらの状態に対しても、ある程度対応できるはずです。よくあるのが、血液の流れを改善すればそれに伴い血液の質も上がってくるので、まずは桂枝茯苓丸100%で治療開始して、様子を見て四物湯割合を増やして行く方法です。しかしそんなことまで考えているとキリがないので、上記の半量、半量としました。

かなり簡潔に提案しましたが、実際の治療では桂枝茯苓丸だけではなく、瘀血の程度により承気湯類を上手に使ったりしないと効果的な改善は見込めない場合も多々存在します。そして一番の問題は瘀血の根本原因が「気」にあったり、また「水」の存在が瘀血の足を引っ張っている場合は、そちらも解決しないとその瘀血は治らないと言うことです。逆に瘀血だけが単独で存在することの方が少ないでしょう。また別に書きますが、そのために加味逍遙散とか当帰芍薬散みたいな処方が存在するのです。ただそれでも瘀血を改善すると「気」や「水」の流れもそれにつられて改善傾向に向くはずです。

以上これらのことを引っくるめて頭の片隅に置いて、一番簡単に考えられる治療の導入は、まずは桂枝茯苓丸と四物湯からです。これで目標を達成できれば大成功、不幸にもこれが不発であっても次の治療の方向性は見えてくるかと思います。

お試し期間は長くとも月経を2回超えるまでです。そこまでに何も変化を感じなければ潔く漢方をやっているお医者さんに相談した方が良いでしょう。(そもそも医者に行くのが面倒な人が薬局で買って来るのでしょうから、医者に行けと言うのもなんですが・・・・・・ただこれ以上先を適当に使ってしまいグチャグチャになってしまうと、その後の治療に困ることが多いからです)

効果はどの様に体感するのか

観察ポイントは、痛みやPMSなどの自覚症状はもちろんのこと、経血の感じ(色、性状、出方)、さらには肩こり、腰回りや太腿の冷え感、便通(子宮卵巣系の血流が良くなると消化管も動き安くなるので意外に便が出やすくなることは多いです)などです。これが直ぐにでも改善されないと次の手です、最初にも書きましたが女性系の処方は山ほどありますから心配する必要はありません。

桂枝茯苓丸の効果発現は比較的早く、一方四物湯は少し時間がかかる傾向があります。かかると言っても3ヶ月程度が目安(今回の場合)です。なので桂枝茯苓丸の早期効果(血流が良くなる様な感じ)を実感しつつ、少し遅れて四物湯の効果(こちらは少し説明が難しいのですが、皮膚の血流、湿いなどが良くなる、顔色が良くなる、更に体が温かい感じがするなど)が体感できれば良いでしょう。四物湯は少量でも良いので長期で続けると体質改善にもなります。

蛇足かも知れませんが、桂枝茯苓丸と四物湯を足した処方(細かくは、地黄を抜き、延胡索、牛膝、紅花を加えた)が実際にあります。折衝飲(せっしょういん)と言い、延胡索、牛膝などの痛みを和らげる生薬が入っているので、(a)(b)タイプの瘀血で、月経痛などが気になる時に処方します。

さて、昨年11月に1.44kgでやって来た猫のTommy君、昨日自宅での計測で2.56kg・・・・・・獣医さんによると、1日に10gあるいは週に100gずつ増えるそうですが、その計算で行くと400gものオーバーです!逞しく筋肉質に育つのは良いのですが、ブヨブヨと横に広がると困ります。いわゆる防風通聖散タイプではダメです。まだ子猫なので自分で走り回っていますが、それ以上にこちらも付き合って少し運動させることにしました。さすがに生後4ヶ月にもなると走りもスピードに加えて迫力が出て来ました。30分以上、猫じゃらしやボールで走り回らせるとお腹が空いて大騒ぎです。何か(夜食)を出すまで絶対に諦めない男で、結局こちらが根負けして筋肉になることを祈って小夜食を出してやることになります。

そう言えば、自分も走り始めた時に1時間を超えると急に体が怠くなって走れなくなった経験があります。その様な時には自販で、甘いお汁粉みたいな物を買って飲むと直ぐに復活します。これは体に糖質を上手に蓄えられないためと何かで読みました。つまり体が持久系スポーツ仕様ではないからです。この様な時には、走った後も異様にお腹が空いてついつい食べ過ぎて、運動しているのに体重が増えてしまいます。長い間続けていると体内のグリコーゲン(糖質)貯蔵量も増えて、2時間半少々ならば補給の必要もなくなって来ました。そうなると走った後も、普通の食事で十分になって食べ過ぎで体重が増えることもありません。

猫もその辺を理解してくれると良いのですが、説明してもまず聞かないので困ります。それどころか、目の上に変な出来物が出るので、慌てて獣医さんに連れて行ったら、「これはどこかにぶつけて腫れているのでしょ」と言われる始末です。思い出してみれば走り回っている時に机や椅子の角にゴンゴン頭をぶつけているので、さすがに無理もありません。今日は話の最後にオチがなくコブですみません・・・・
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細野漢方診療所 細野孝郎