• 内科医師からスタートし、現在は三代続いている漢方専門のクリニックを銀座で開業中。女性系疾患(月経関連、更年期、 不妊症など)、アトピー性皮膚炎などから、ちょこっと体の弱い人までお見えになります。趣味はマラソン(基本的にはインドアでテレビ派)、猫(アメショ)、週に1回の外食。マラソンはsix stars finisher(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク)日本人では338人目位の達成!!

食事でも夏は冷たい物、冬は温かい物が好まれる様に漢方薬も夏冬で切り替えることがあります。最近は夏のエアコンが強い職場が多いため、真夏でもお腹や背中が冷える方もおられ夏場も温性の処方を使うことがあります。しかし夏に冷やす処方とは言っても、それは体内に過剰に溜まった熱を放出させる処方であって、本当に体を冷やす処方を使うことはほぼありません。詳しいことはまた来年の夏に覚えていれば書きます。

さて、冷えると感じる場所は色々あるかと思いますが、代表的な部位は手足、背中、腰回り(お尻周り)、太腿などかと思います。この中でも手足の冷え、特に足先の冷えはかなり厄介で中々解消できません。「漢方で手足の冷えが改善」などとネットで見て期待し来院される方も多いのですが、私が最初に必ず言うのが「手は何とかなると思うけど、足は時間かかると思いますよ」と、ちょっと正直すぎる残念な一言です。やはり足は心臓から遠いのでどうしても血流が良くなりにくい、それと体の中でも熱は上向する性質があるので足は元々が冷えやすいのです。これは温かい空気が上に登るのと同じことです。

ここで足を暖めることよりはるかに大切なことは内臓を暖めることだと思っています。内臓の冷えは、内臓の血流低下と関係があり、その結果内蔵の働きが悪くなります。子宮卵巣系の血流低下はホルモンバランスの乱れとなり、月経不順や月経痛から不妊症などの婦人科系疾患に関係し、また消化管の機能も低下し、下痢や便秘、腹痛などの症状と関係してきます。足が冷える人は大抵内蔵も冷えている可能性が高いでしょう。

さらに内蔵温度が免疫や代謝に関係していると言われています。著名な先生がそんなこと書いた本を出していた記憶があります。それが医学的に正しいのかどうなのかはちょっと勉強不足で知りませんが(一度論文を調べておきます)、普通に考えて低体温の状態では免疫や代謝機能も働きにくいはずです。

そして何よりも体の深部から冷えると体は動かなくなり、妙な怠さを感じるかと思います。過度に冷えると怠さを感じた経験は誰にでもあるかと思います。これは自分も経験があります。2018年のフランクフルトマラソンは小雨が降ったり、後半は北からの強風が吹いたりの大荒れのレースでした。後半は雨と汗で濡れた体に物凄い強風が吹きつけ体の芯から冷えてしまい、思うように体が動かなくなり、さらに手足は勝手に小刻みに震えるしで32キロ辺りで棄権しようかどうしようか悩んでいたら、沿道で応援していた女性から温かい紅茶を手渡されて生き返り何とか完走できました。飲んだ瞬間に胃の辺りが暖かくなり、血流が再開し体に力が戻り気力も回復し、不思議と残りの10キロを走り切れました。余談ですが、西洋人は日本人よりも代謝が良く体温が高く37度近くあり、さらには筋肉質なためか寒さにはかなり強いです。街の中で冬でも薄着の西洋人を見かけると思いますが、あれは痩せ我慢しているのではなくそれが快適なのです。彼らの中に混じってアメリカやヨーロッパのレースを走るたびに、体格はもちろんのこと、それ以上に体質の違いを実感してしまいます。でも少しでも暑い(こちらとしては快適な気温)と彼らは苦しそうなので、まぁそこはお互いさまなのですが。

話を戻して、この問題となる内臓の血流の悪さや冷えはどこで自覚するのかと言うことです。実はお腹が冷たいと言ってお腹をさする人はあまりいません。むしろ腰背部、お尻、大腿などの冷えとして自覚されます。その部分の冷えを感じる方は、お腹の冷えがあると言って良いでしょうし、いわゆる内蔵温度が低い可能性があります。さて、これをどう改善するのかどういう漢方が良いのか、それを次回以降に書いて行きます。最初に一つだけ先に書いておきますが、まずは腰にカイロを当ててみて下さい。一週間カイロを当てて、それでもダメなら次回をお楽しみに。

と言うことで、気温が高い時には冷やし蕎麦やせいろが多かったのですが、さすがにこの季節になると温かい蕎麦一択となります。今日はいきなり寒くなったので、思わず泰明庵で二番目に温まる物を頼んでしまいました。かしわ餡掛け蕎麦です。片栗粉で閉じた物は他にはカレー蕎麦があり、もちろんそれも同様に温まります。そしてまた右下に添えられた生姜がさらに体を温めてくれます。本当は乾いた生姜(乾姜、冬になるとコレを処方に加えて冬バージョンの処方を作成するパターンも多いです)の方が温める作用が強いのですが、蕎麦にはやはりこちらの擦った生姜です!食べて内蔵温度が上がって昼からは少し体も楽になりました!!ここで一番温まる物は鍋焼きうどんですが、海老天とかが入っているからかちょっと高価でして、さすがに仕事中の昼食には・・・・・そこで費用対効果を考えると内蔵温度を上げるには、やはりかしわ餡掛け蕎麦です。

細野漢方診療所 細野孝郎