• 内科医師からスタートし、現在は三代続いている漢方専門のクリニックを銀座で開業中。女性系疾患(月経関連、更年期、 不妊症など)、アトピー性皮膚炎などから、ちょこっと体の弱い人までお見えになります。趣味はマラソン(基本的にはインドアでテレビ派)、猫(アメショ)、週に1回の外食。マラソンはsix stars finisher(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク)日本人では338人目位の達成!!

漢方戯言のコーナーに「漢方漫談 “そば” その三」を公開しました。詳しくは読んで頂けると分かるのですが、要約すると、「食道癌や胃癌の患者さんに蕎麦・野菜のみの厳格な食事制限をすると予後が延びた。今現在(1970年)それほど研究されていないので推測だが、蕎麦の茎にあるルチンの様な成分に抗がん作用があるのではないか?」との内容です。これは50年前に書かれたのですが、その当時にここまで考えていたことには驚きました。

1970年にルチンに関してどれほど研究されていて、どの程度論文が出ていたのかは分かりません。しかし今では簡単にネット検索できます。調べると蕎麦などに含まれるルチンは、抗炎症効果や血流改善効果、また抗酸化作用などに関して多くの論文が出ています。よって蕎麦は健康食、血液サラサラで血管も強くなり、動脈硬化、高血圧の予防になると言われています。でも1970年に予見した抗がん作用の記載は一瞥したところ国内文献では見当たりませんでした。

そこで外国論文を検索してみます、”rutin×anti×cancer”で検索すると多くの論文が見つかりました。要点としては、ルチンはがん細胞の増殖抑制を媒介する、がん細胞の自己死滅を誘発する、血管新生や転移を妨げることにより抗がん作用があるとのことです。今年に発表されたものや、新しい論文が多いことより、比較的最近になって研究されてきたことなのかなと思います。凡人の私は、いつもの昼食に抗がん作用や抗酸化作用があるとは全く考えていませんでした。

この蕎麦の話をもう少し考えてみます。確かに野菜や蕎麦にはルチンが豊富なのでしょうが、果たして固形癌を縮小させるまでの含有量があったかどうかは大いに疑問です。そこで大昔に読んだ食品酵素学の本の内容を思い出しました。体の使える酵素の総量は決まっているので、消化酵素として使い過ぎると免疫酵素の量が減ると言う話です。つまりこの話の好結果は蕎麦や野菜のみ食は、消化酵素を無駄遣いせずに、余った酵素を充分に疫に回せたことも関係するのではないかと思います。腹八分目が健康の秘訣とはこう言うことかと思っています。

余談ですが、今回の食養論にも「私たちは噴門癌といったのは誤診だったのではなかろうか、とさえ考えるようになった。」と書かれています。まさしくその通りで、「この治療法で病気が治った!」などホームページとかでたまに見かけますが、特にその治療法が標準治療ではない場合はそもそもの診断を疑った方が良いでしょう。しっかりと診断基準に当てはまっているのかは確認する必要があります。

さて、本日のお昼は泰明庵でキツネと揚げ玉が入った冷やしミックス蕎麦です!この甘いキツネと香ばしい揚げ玉がお汁に浸って食欲をそそります!!が、今日の話の治療食として見てみるとこれは明らかに失格です。

まず、この蕎麦は二八蕎麦ですので十割ではありません。さすがに白色炭水化物の小麦が入ると何かとダメでしょうし、そもそも蕎麦が薄められてルチンの含有量はどうなの??って話です。さらに食欲をそそるキツネと揚げ玉なんか食品酵素学から見れば論外です。次回は十割蕎麦で、味気ないですがカイワレとネギだけで食べなければダメですか・・・・・とは言ってみても、銀座界隈で十割蕎麦はちょっと値段がはるのが問題です。

細野漢方診療所 細野孝郎