昨今テレビをつけると「日本感染症学会では・・・・」とか、よく聞きますが、漢方界にも立派な学会はいくつか存在します。それぞれの学会では学会雑誌と言うものを発行していて、その中で新しい治療の発見やこんな症状にこの処方を使ったら良くなったなどの発表がなされています。もちろんこれらのことは、好き勝手書いて全て採用されるわけではありません。査読委員会で査読して、記載内容に虚偽などなく事実に基づいていると判断されれば掲載されます。これには時間を要しますから、例えばコロナ感染症に関しての事など緊急を要する場合は、審査を手短にしてまずは短文でletterと言う形で掲載されたりもします。
私もいくつか漢方系の学会に所属していますが、学会誌に掲載されている内容は日常の治療の参考になります。漢方的な視点から漢方を考えるだけではなく、西洋医学的な視点から考えられた処方や治療もとても参考になります。例えば体外受精(不妊治療)の移植時の周期療法などはとても斬新で、論文には数値データも示してあり大変納得しました。その方式を自分のやっている不妊治療に早速取り入れて既に10年以上になりますが、今でもその基本形は変えていません。最近はやはり新型コロナウイルス感染症の後遺症に関する論文がちらほらと目立ってきています。ブレインフォグや脱毛、持続する呼吸困難などに対してみなさん知恵を絞って漢方治療されて一定の効果を収められています。
当院もコロナに感染してしまった、とかコロナの後遺症で胸苦しくて咳が止まらないなど訴える患者様が残念ながら増えています。家族で感染して一方は進行中で発熱もしている、他方は後遺症で喉が痛くて咳が出るなどの相談もあります。以前よく処方していた清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)は多種の生薬が含まれていて、それはそれで便利な処方でした。服用すると比較的早くに胸苦しさが解消されます。私が最近はコロナ感染の方に処方するのは(熱があるなど比較的初期の場合)、葛根湯(かっこんとう)、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、小柴胡湯(しょうさいことう)、柴葛解肌湯(さいかつげきとう)、そしてこれこそがキモだと思うのですが、これらの処方に板藍根(ばんらんこん)と魚腥草(ぎょせいそう)を加えます。板藍根や魚腥草は抗ウイルス作用のある生薬でSARSが流行した頃に中国ではさかんに使われていました。今回のコロナでも、2020年頃は板藍根が国内市場からなくなりかなり苦労しました。
一方、コロナ感染後遺症で良く診るパターンは鼻の奥から咽が痛くて、鼻水は喉奥に垂れて咳が出ると言う感じです。熱がまだ残っているか、また胸苦しさがあるかないかなどで処方は変わって来ますが、症状的にほぼ喉の痛み程度、さらには鼻の奥に違和感あり、なんか頭の中に熱が篭っている感じ(こういうパターンが最近多い)だと、駆風解毒湯加桔梗石膏(くふうげどくとうかききょうせっこう)プラス麦門(ばくもん)などを処方しています。これは思っていたより効果あり、たいてい一週間程度で良くなったと言われます。コロナ感染後遺症にはいろいろなタイプがあり、また体質も人それぞれですので一対一対応的にどの処方が良いと簡単に言えませんので、よろしければご相談下さい。
前回のブログで暑い中を走って熱中症になりかけたと書きました。その時は動悸と眩暈の中で、暑い日は走る時間を夜にするか休足日にしようと深く反省しました。しかしその二日後にはたと思い付きました!涼しい場所を走れば良いんだ!!と。そもそも休みの日に何もしないでずっと家にいると体は重いし、頭はボーッとするし、またお腹も空きません。結局ズルズルと一日中なにもせずに終わってしまいます。漢方的には「気」の回らない気滞(きたい)の状態です。しかし午前中に走ると気も回り、体表部の汗も全部出て体が凄く軽くなり、午後からはテキパキと色々と仕事をこなせます。これは「気」が回り、水滞(すいたい)も解消されると言うことです。涼しい場所が近くにありました!公園の外周未舗装部分です。一周で1.6キロ程あり、木陰なので直射日光が当たりません。思わぬ場所に木の根っこが出ていて躓くと危険なので自然とスピードも落ちます。休み休みで10キロ程度回って来ました。気温は35度だったみたいですが、のんびり気分良く走れました。舗装された道路と違って路面が不正ですから、普段使わない足の筋肉も鍛えられるのも利点でしょう。
以前に書いたコロナ感染症の記事のリンクです。漢方での新型コロナウイルス感染症治療の考え方と漢方処方、です。2020年に書いているのでもう2年もこんなこと繰り返しながら経過しているのかと言う感じです。もういい加減に終わって欲しいものです。
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細野漢方診療所 細野孝郎